2016.2.25

『オニ文化コラム』Vol,11

 
山崎 敬子
コラムニスト
玉川大学芸術楽部講師

だんだんと空気が暖かくなってまいりましたね。春はすぐそこです。

そんな2月。文化庁からユネスコ無形文化遺産代表一覧表への提案について「来訪神:仮面・仮装の神々」が提案される旨の発表がありました(2月17日)。

仮面・仮装の異形の姿をした「来訪神」が年の初めや季節の変わり目に集落の家々を訪れ、子供や怠け者を戒めたり、災厄を払ったり、集落の方々に幸や福をもたらす行事が、日本各地に伝承されております。

文化庁はその中から、国指定重要無形民俗文化財の指定を受けている「甑島のトシドン(鹿児島)」「男鹿のナマハゲ(秋田)」「能登のアマメハギ(石川)」「宮古島のパーントゥ(沖縄)」「遊佐の小正月行事(山形)」「米川の水かぶり(宮城)」「見島のカセドリ(佐賀)」「吉浜のスネカ(岩手)」・・・の8件を選出しております。
あら、このコラムでも紹介してきた来訪神もチラホラ。

来訪神は鬼の風貌で表現されることも多く、また、その行動も人々に襲い掛かったり脅したり・・・と荒ぶっていることが多いです。パーントゥに至っては観客に泥を塗りつけてきます。私もパーントゥの泥浴びを体験しておりますが、あの泥を一度浴びると「もう他に何を浴びても怖くないな」という気持ちになり、なんだか強くなれた気がしました。泣いたり怒ったりする方も中にはいらっしゃいましたが・・・だからこそ、今回のこのコラム。

それで良いのです。泣いて怒って絶叫して逃げて・・・それが良いのです。

感情が高ぶった時のご自身を思い出してみてください。体温は上昇し、気持ちも何だかホカホカしていますよね?そして思い切り泣いたり叫んだりした後って、何となく心底スッキリしませんか?
そして・・・皆で同じ体験をした後、何となく自然と笑顔になりませんか?

皆で同じ体験をすることで地域コミュニティ間の結びつきや世代を超えた交流が芽生えます。それが農作業(共同作業)や普段の生活にどれだけの福をもたらすことか。
オニの風貌をした神は、そのような福をもたらしてくれる存在なのです。

ユネスコに来訪神が本当に登録されるかは、これからの審議次第ですが・・・楽しみですね♪

山崎 敬子 / Yamazaki keiko

実践女子大学院文学研究科美術史学専攻修士課程卒。大学在学時から折口信夫の民俗芸能学を学び、全国の祭礼を見て歩く。有明教育芸術短期大学子ども教育学科非常勤講師(民俗学)や早稲田大学メディア文化研究所招聘研究員などを経て、現在は、玉川大学芸術学部パフォーミング・アーツ学科講師(民俗芸能論)や学習院さくらアカデミー講師ほか。また、民俗芸能を地域資産として活かすべく、(株)オマツリジャパンなどで地域活性に取り組んでいる。


著作例:
編集:『年中行事辞典』(三隅治雄・編/東京堂出版 2007年)、
共著:『メディアの将来像』(メディア文化研究所・編/一藝社2014年)
著書:『にっぽんオニ図鑑』(じゃこめてい出版 2019年)
脚本:朗読劇『イナダヒメ語り』(武蔵一宮氷川神社 2018年)
コラム:オニ文化コラム(社)鬼ごっこ協会 毎月更新)、山崎先生の民俗学(ミドルエッジ)、にほん風習風土記(陸上自衛隊)、氷川風土記(武蔵一宮氷川神社)