2016.10.31

『オニ文化コラム』Vol,19

 
山崎 敬子
コラムニスト
玉川大学芸術楽部講師

冷えてきましたね・・・しかし、これからがまさに鬼の到来シーズンです♪

民俗学を確立されたうちの1人・折口信夫先生は『鬼の話』の中で「「おに」と言ふ語にも、昔から諸説があつて、今は外来語だとするのが最勢力があるが、おには正確に「鬼」でなければならないと言ふ用語例はないのだから、わたしは外来語ではないと思うてゐる。さて、日本の古代の信仰の方面では、かみ(神)と、おに(鬼)と、たま(霊)と、ものとの四つが、代表的なものであつた」と述べておられます。そう。仏教由来の鬼と、日本の古代信仰のオニは、本来別でした。そして、古代の姿は各地のお祭で見ることができます。

祭に出るオニについて、折口先生は「春の祭りには、一年中の農作を祝福するのが、普通であつた。其には、其年の農作の豊けさを、仮りに眼前に髣髴させようとした。かうした春の農作物祝福の祭りの系統を、はなまつりと言ふ。新・旧正月に通じて、今年の農作はかくの如くある様に、と具体的に示す。此春の祭りには、おにが出て来るのだ」と書かれております。

はなまつり。
愛知県北設楽郡東栄町では霜月(11月)から翌3月にかけて各地で「花祭」が行われます。鎌倉時代末から室町時代にかけて修験道の山伏らによって伝えられたとも言われるこのお祭では神楽を行います。この神楽・・・学術的には時期から「霜月神楽」、形式から「湯立神楽」と言います。旧暦11月は神や自然などの勢いが衰える時期として、そのパワーを新たに元気にし、翌年の豊作のためのパワーにつなげるために行うのが霜月神楽。そして、大きな釜にお湯を立て、その湯煙の前で行う神楽を湯立神楽といい、これは「伊勢流神楽」の流れを汲みます。

この花祭にはオニが欠かせません。「榊鬼(さかきおに)」「山見鬼(やまみおに)」なのオニが登場します。山の奥からフッと現れ、夜を徹して舞い踊り続ける彼らは、まさに「春くる鬼」。彼らは翌年の自然の恵みをもたらしてくれる日本古来の神さまです。そして、祭りがおわると、姿を消します。

春に来る鬼たち・・・各地に実は居ます♪秋田県のナマハゲが有名かもですね。
さあ、いよいよ鬼たちと出会える季節に突入しますよ♪

山崎 敬子 / Yamazaki keiko

実践女子大学院文学研究科美術史学専攻修士課程卒。大学在学時から折口信夫の民俗芸能学を学び、全国の祭礼を見て歩く。有明教育芸術短期大学子ども教育学科非常勤講師(民俗学)や早稲田大学メディア文化研究所招聘研究員などを経て、現在は、玉川大学芸術学部パフォーミング・アーツ学科講師(民俗芸能論)や学習院さくらアカデミー講師ほか。また、民俗芸能を地域資産として活かすべく、(株)オマツリジャパンなどで地域活性に取り組んでいる。


著作例:
編集:『年中行事辞典』(三隅治雄・編/東京堂出版 2007年)、
共著:『メディアの将来像』(メディア文化研究所・編/一藝社2014年)
著書:『にっぽんオニ図鑑』(じゃこめてい出版 2019年)
脚本:朗読劇『イナダヒメ語り』(武蔵一宮氷川神社 2018年)
コラム:オニ文化コラム(社)鬼ごっこ協会 毎月更新)、山崎先生の民俗学(ミドルエッジ)、にほん風習風土記(陸上自衛隊)、氷川風土記(武蔵一宮氷川神社)