2016.11.24

『オニ文化コラム』Vol,20

 
山崎 敬子
コラムニスト
玉川大学芸術学部講師

オニ文化コラムは今回で20回目。ですので少しだけ原点回帰を。
 
そもそも「オニ」とは何か。

「オニ」という言葉の語源についての初見は、平安中期に確立したとされる日本最初の百科辞典『和名類聚抄』。ここに「鬼和名於爾 或説云、隠字音於爾訛也、鬼物隠而不欲顕形、故俗曰隠也」と記されております。つまり、姿が隠れている「隠(おん)」が転じて「鬼(おに)」になった、と。この説に対しても色々の指摘はありますが、ここでは書かれてある通り「普段隠れている存在」という理解でいきます。

 
そんなオニがいつ現れるかというと、歳の変わり目など節目の祭礼です。一番有名なオニは、秋田県のナマハゲではないでしょうか。地域の子供をわざと泣かせることで、その子の魂の中からパワーを引き出してくれる良い神(オニ)です。
 
ナマハゲの様な分かりやすいオニもいれば、いまだ正体不明な存在も居ます。
 
それは毎年10月14日、大分県国東市国見町岩倉八幡社(櫛来社)に伝わる火祭りに現れます。
「ケベス」と呼ばれる存在です。
そも、この祭りの起源についてもよく分かっていません。仮面姿の「ケベス」については「蹴火子(須)」説や「恵比寿」説、鍛冶の神説など出ておりますが、決定打になる説はありません。ただし、文化庁の「文化遺産オンライン」には「年占などを伴う」とあり、また、祭礼中の火の粉を浴びると無病息災が叶うと伝わっておりますので、悪い存在ではなく、やはり、これも日本的な神としての「オニ」なのだろうなあ・・・と思います。
 
姿を隠しているモノが表に現れるとき、人ではない「異形」の表現を取ります。人ではない=人の顔ではない=仮面をつける、という流れです。ですから、祭礼に登場するオニは仮面姿なのです。
そして、そのオニたちが普段どこに隠れているのか。隠れやすい場所といえば、山。『日本書記』に斉明天皇の葬儀の際の記述では朝倉山の上に「鬼有て、大笠を着て、喪の儀を臨み視る。」とあります。大笠を着た鬼・・・これは朝倉山の神さまか、と言われております。
 
神としてのオニ。21回目以降もオニ文化コラムでは色々のオニを紹介してまいります。どうぞこれからもお付き合いくださいませ♪

山崎 敬子 / Yamazaki keiko

実践女子大学院文学研究科美術史学専攻修士課程卒。大学在学時から折口信夫の民俗芸能学を学び、全国の祭礼を見て歩く。有明教育芸術短期大学子ども教育学科非常勤講師(民俗学)や早稲田大学メディア文化研究所招聘研究員などを経て、現在は、玉川大学芸術学部パフォーミング・アーツ学科講師(民俗芸能論)や学習院さくらアカデミー講師ほか。また、民俗芸能を地域資産として活かすべく、(株)オマツリジャパンなどで地域活性に取り組んでいる。


著作例:
編集:『年中行事辞典』(三隅治雄・編/東京堂出版 2007年)、
共著:『メディアの将来像』(メディア文化研究所・編/一藝社2014年)
著書:『にっぽんオニ図鑑』(じゃこめてい出版 2019年)
脚本:朗読劇『イナダヒメ語り』(武蔵一宮氷川神社 2018年)
コラム:オニ文化コラム(社)鬼ごっこ協会 毎月更新)、山崎先生の民俗学(ミドルエッジ)、にほん風習風土記(陸上自衛隊)、氷川風土記(武蔵一宮氷川神社)