2023.12.03

『オニ文化コラム』Vol,102

 
山崎 敬子
コラムニスト
玉川大学芸術学部講師

 
短い秋が終わり、すっかり冬。
 
昔は「子供は風の子」と言われました。どんなに寒くても、子供は平気で戸外で遊び回ることから言われたフレーズです。
 
遊び。
子供の遊びといえば鬼ごっこ!子供の頃を思い出しながら考えると、ドロケイ(ケイドロ)や鬼ごっこ、色鬼などを連想する人も多いのではないでしょうか。これら様々の子供の遊びは単なる「遊戯」に止まらず、先輩後輩のコミュニケーション、地域との関わり方など社会教育的効果があると思います。そしてそれは、日本の文化の中に根付いていた「地域教育」でもありました。
 
戦後、民俗学者の柳田國男は教育現場に民俗学研究を反映しようと試みており、「成城小学校での『柳田社会学科』は『なるべく日本民族がつくりあげ、われわれが伝承している文化と呼ばれる生活の中から、素材を選』び、(中略)子ども達を日本人の心意伝承を背負った存在として捉え、様々な民俗文化の学習を通して、伝統との連続の中で子どものまわりにある社会について考えさせようとした」そうです。
 
鬼ごっこしかり、祭りしかり。
 
地域のお祭りでは、老人には老人の、大人には大人の、子供には子供の役割があるように、年齢別の組織「子供組」「若者組」などが存在し、それぞれの中で社会規範や役割を伝授していました。しかし、近代以降の学校制度の普及にともない、日本古来の「子供組」「若者組」などはその機能を失って社会から姿を消し、結果、伝統文化の伝達が出来なくなってしまった感があります。近代教育の中で日本の生活文化を活かした取り組みは今も行われていますが、それは言い換えれば、それだけ「失われた」ものがある証でもあるのです。
 
その現在、誰でも参加できる遊びとして「鬼ごっこ」は愛されています。「誰でも参加できる」遊びが現代社会にも必要な証だと思います。
 
今後、日本が高齢化社会に突き進む中、温故知新のように昔の生活の知恵や技から改めて教わることも増えてくるのではないでしょうか。今も「誰でもできる遊び」としての鬼ごっこから生まれた「スポーツ鬼ごっこ」や、地域活性として注目される各地の祭礼の動きもまた、日本文化の流れから生まれた新たな日本文化です。
 

山崎 敬子 / Yamazaki keiko

実践女子大学院文学研究科美術史学専攻修士課程卒。大学在学時から折口信夫の民俗芸能学を学び、全国の祭礼を見て歩く。有明教育芸術短期大学子ども教育学科非常勤講師(民俗学)や早稲田大学メディア文化研究所招聘研究員などを経て、現在は、玉川大学芸術学部パフォーミング・アーツ学科講師(民俗芸能論)や学習院さくらアカデミー講師ほか。また、民俗芸能を地域資産として活かすべく、(株)オマツリジャパンなどで地域活性に取り組んでいる。


著作例:
編集:『年中行事辞典』(三隅治雄・編/東京堂出版 2007年)、
共著:『メディアの将来像』(メディア文化研究所・編/一藝社2014年)
著書:『にっぽんオニ図鑑』(じゃこめてい出版 2019年)
脚本:朗読劇『イナダヒメ語り』(武蔵一宮氷川神社 2018年)
コラム:オニ文化コラム(社)鬼ごっこ協会 毎月更新)、山崎先生の民俗学(ミドルエッジ)、にほん風習風土記(陸上自衛隊)、氷川風土記(武蔵一宮氷川神社)