2023.9.27

『オニ文化コラム』Vol,100

 
山崎 敬子
コラムニスト
玉川大学芸術学部講師

 
9月24日付の読売新聞に「高松市鬼無町佐料で伝統芸能「佐料編笠(あみがさ)神楽」が22日に行われ、早秋の夜に華麗な舞が披露された」という記事がありました。農耕用の編みがさを舞手が烏帽子に見立ててかぶることから「編笠神楽」と呼ばれる地域芸能です。
 
そう、香川県高松市には「鬼無」の地名が。現在では「鬼」より盆栽の集落として世界的にも知られる地域です。
 
地名に「鬼」。(農)香川県鬼無植木盆栽センターのホームページには「鬼無(きなし)の地名のいわれは、その昔、鬼退治が行なわれて平穏な村になったという桃太郎伝説に由来するもの」とあり、鬼無の安徳地区に伝わる「大古屋」は桃太郎のお爺さんとお婆さんの住居跡であると記しています。
 
「鬼無」の由来についてもう少し細かく書きますと、この地域で育った桃太郎が瀬戸内海を渡ってくる海賊を鬼ヶ島(女木島)で退治したものの、その後、鬼の残党が鬼無まで攻め込んできたため桃太郎はそれを討伐したため、それ以降、この場所を「鬼が無し」=鬼無と呼ばれるようになったため、とのこと。それ以外にも、その昔、元讃岐国守だった菅原道真が、地元の漁師から「稚武彦命(古代の皇族。若日子建吉備津日子命とも)が3人の勇士を従えて海賊退治を行った」という話を聞き、それをおとぎ話にまとめたものが「桃太郎伝説」であるという話も残っています。
 
そこまで言うからには桃太郎もいたという伝承も…勿論ありまして、鬼無町鬼無848番地には熊野権現桃太郎神社があります。この神社には桃太郎の墓があるほか、桃太郎のお供をしたキジとイヌとサルの墓、さらに桃太郎のお墓の横にはおじいさんとおばあさんが一緒に眠るお墓もあるんです!さらには、このおじいさんとおばあさんには退治以外の信仰も芽生えているとか。おじいさんとおばあさんが稚武彦命の見識に感じ入り、すぐに縁を結んで養子にしたという言い伝えから縁結びの神とされているそうですよ。
 
まさかの縁結び・・・。
縁と言えば!この連載もついに100回目。これは鬼ごっこ協会様、皆様とのご縁あってこそ。ありがとうございます。
 
日本に多く残る鬼にまつわる文化。今後も紹介していきたいです♪
 
 

山崎 敬子 / Yamazaki keiko

実践女子大学院文学研究科美術史学専攻修士課程卒。大学在学時から折口信夫の民俗芸能学を学び、全国の祭礼を見て歩く。有明教育芸術短期大学子ども教育学科非常勤講師(民俗学)や早稲田大学メディア文化研究所招聘研究員などを経て、現在は、玉川大学芸術学部パフォーミング・アーツ学科講師(民俗芸能論)や学習院さくらアカデミー講師ほか。また、民俗芸能を地域資産として活かすべく、(株)オマツリジャパンなどで地域活性に取り組んでいる。


著作例:
編集:『年中行事辞典』(三隅治雄・編/東京堂出版 2007年)、
共著:『メディアの将来像』(メディア文化研究所・編/一藝社2014年)
著書:『にっぽんオニ図鑑』(じゃこめてい出版 2019年)
脚本:朗読劇『イナダヒメ語り』(武蔵一宮氷川神社 2018年)
コラム:オニ文化コラム(社)鬼ごっこ協会 毎月更新)、山崎先生の民俗学(ミドルエッジ)、にほん風習風土記(陸上自衛隊)、氷川風土記(武蔵一宮氷川神社)