2023.2.26

『オニ文化コラム』Vol,93

 
山崎 敬子
コラムニスト
玉川大学芸術学部講師

 
愛知県豊橋市の安久美神戸神明社の例祭「豊橋鬼祭」が3年ぶりに観客を入れて開催されました。
 
この祭礼は東三河に春の訪れを告げる祭礼として毎年2月10日・11日に行われます。平安から鎌倉時代に流行した田楽に日本建国の神話を取り入れて神事としたもので、古式を崩さずに伝えられていることから、1980年(昭和55)に国の重要無形民俗文化財として指定されました。
 
祭礼では氏子14町会によって神楽・田楽・歩射(ぶしゃ)・卜占(ぼくせん)・御神幸など様々な行事が行われますが、特に有名な行事が「天狗と赤鬼のからかい」。荒ぶる神である赤鬼と武神天狗が双方秘術を尽くして闘い、やがて敗れた赤鬼が償いにタンキリ飴と白い粉(小麦粉)をまきながら境外そして町内へ飛び去っていくもので、この粉を浴び飴を食べると厄除となり夏病みしないと言い伝えられます。
 
また、この祭礼はデジタルともコラボしている行事としても知られています。そのアプリこそ「おにどこ」(https://o2doko.com/)。
 
このアプリはIT/Iot技術を用いた街づくりや、街なか活性化の一貫として、豊橋技術科学大学ユビキタスシステム研究室(大村研究室)・建築設計情報学研究室(水谷研究室)・株式会社ウェブインパクトにより開発されたものです。このアプリをダウンロードしておくと、赤鬼が今どこにいるかをマップ上で確認でき、鬼に会うために迷わずに移動できます。このマップには赤鬼の移動予定のルートも表示されているため、この後赤鬼がどの道を通るかもわかります。


このアプリを使うと、現地に居なくても(例えば私のように埼玉県に居ても)鬼を携帯上で感じることができ、祭礼に参加している気持ちになれます。


そういえば、豊橋には世界的なチームも存在します。「トヨハシ・テング」です。これは英国の魔法界を描いた「ハリー・ポッター」シリーズズの副読本「クィディッチ今昔」に日本が誇るクィディッチの強豪チームとして書かれ、今年2月に発売された新作ゲーム『ホグワーツ・レガシー』にも登場します。ヘビーなハリーポッターファンには豊橋は有名なのです。
 
古来より続く鬼の祭礼も、豊橋も、時代に合わせて最新技術の中に登場するようになってきましたね。
 

山崎 敬子 / Yamazaki keiko

実践女子大学院文学研究科美術史学専攻修士課程卒。大学在学時から折口信夫の民俗芸能学を学び、全国の祭礼を見て歩く。有明教育芸術短期大学子ども教育学科非常勤講師(民俗学)や早稲田大学メディア文化研究所招聘研究員などを経て、現在は、玉川大学芸術学部パフォーミング・アーツ学科講師(民俗芸能論)や学習院さくらアカデミー講師ほか。また、民俗芸能を地域資産として活かすべく、(株)オマツリジャパンなどで地域活性に取り組んでいる。


著作例:
編集:『年中行事辞典』(三隅治雄・編/東京堂出版 2007年)、
共著:『メディアの将来像』(メディア文化研究所・編/一藝社2014年)
著書:『にっぽんオニ図鑑』(じゃこめてい出版 2019年)
脚本:朗読劇『イナダヒメ語り』(武蔵一宮氷川神社 2018年)
コラム:オニ文化コラム(社)鬼ごっこ協会 毎月更新)、山崎先生の民俗学(ミドルエッジ)、にほん風習風土記(陸上自衛隊)、氷川風土記(武蔵一宮氷川神社)