2021.11.29

『オニ文化コラム』Vol,80

 
山崎 敬子
コラムニスト
玉川大学芸術学部講師

 
東京都内最古の寺といえば台東区の金龍山浅草寺(7世紀)ですが、二番目はご存じでしょうか。調布市にある8世紀建立の深大寺です。
 
この同寺で11月3日から23日まで、同寺所有の木彫「鬼大師(おにだいし)像」が205年ぶりに公開されました。
 
この鬼大師は、僧形の元三大師(がんざんだいし)が鬼のような風貌に変化した姿とされたもの。作者は不明ですが、江戸時代に作られたもので15センチほどです。今から205年前の文化13年に、深大寺から江戸両国に「元三大師像」と「鬼大師像」が出開帳され、この鬼大師像は元三大師の胎内仏であったことが特記されています。そしてこの出開帳以来、「鬼大師像」は秘仏として厳重に二重の厨子に納まり、今日まで一切その扉は開けられずに来たそうです。
 
そして今年。上野の東京国立博物館が10月12日から11月21日にかけて、伝教大師1200年大遠忌記念 特別展「最澄と天台宗のすべて」を開催しました。疫病退散のご利益で知られる元三大師が出開帳されたことを受け、深大寺では二重の扉を開けることにされたそうです。
 
さて、元三大師は良源とも言い、平安時代に実在した天台宗の僧侶です。天台宗の僧侶のトップである天台座主でもあり、中世以降は民間において「厄除け大師」としても信仰されました。疫病が流行した際、自身の力で疫病を退散させた非常に霊験あらたかな僧侶としても信仰されておりますが、鬼神と化して疫病神を追い払ったともとされ、その姿を記した魔除けや厄除けの護符は広く信仰されました。元三大師(良源)を象った護符には「角(つの)大師」「豆大師」「厄除け大師」など、様々な様式がありますので、地域ごとの護符を集めてみるのも良いかもです。
 
弟子の中には日本人の地獄極楽観に多大な影響を与えた『往生要集』を記した源信(恵心僧都)がいます。
 
最後になりましたが、205年ぶり特別公開にあわせ、深大寺では限定特別朱印が!しかも深大寺に伝わる古版木の豆大師よりデザインされた豆大師クリアファイル付きだとか!朱印にあらわされた鬼大師は、深大寺に伝わる江戸時代の版木より復刻したものだそうです。私は買うことはできませんでしたが、いつか実物を見たいものです。
 

山崎 敬子 / Yamazaki keiko

実践女子大学院文学研究科美術史学専攻修士課程卒。大学在学時から折口信夫の民俗芸能学を学び、全国の祭礼を見て歩く。有明教育芸術短期大学子ども教育学科非常勤講師(民俗学)や早稲田大学メディア文化研究所招聘研究員などを経て、現在は、玉川大学芸術学部パフォーミング・アーツ学科講師(民俗芸能論)や学習院さくらアカデミー講師ほか。また、民俗芸能を地域資産として活かすべく、(株)オマツリジャパンなどで地域活性に取り組んでいる。


著作例:
編集:『年中行事辞典』(三隅治雄・編/東京堂出版 2007年)、
共著:『メディアの将来像』(メディア文化研究所・編/一藝社2014年)
著書:『にっぽんオニ図鑑』(じゃこめてい出版 2019年)
脚本:朗読劇『イナダヒメ語り』(武蔵一宮氷川神社 2018年)
コラム:オニ文化コラム(社)鬼ごっこ協会 毎月更新)、山崎先生の民俗学(ミドルエッジ)、にほん風習風土記(陸上自衛隊)、氷川風土記(武蔵一宮氷川神社)