2021.2.26

『オニ文化コラム』Vol,71

 
山崎 敬子
コラムニスト
玉川大学芸術学部講師

 
 
2020年の発売以来、世界的に人気の任天堂のソフト「あつまれどうぶつの森」。2月の節分に合わせ、節分の説明記事の公開や「豆まきセット」や鬼コスチュームを販売し、世界中のユーザーに節分と鬼が拡がりました。そんな2月は各媒体で鬼特集が組まれ、自分も『美術の窓』(生活の友社)で鬼の祭礼の紹介をさせていただきましたので一部紹介いたします。
 
①三重県 上野天満宮 上野天神祭「ひょろつき鬼」
是非とも見ていただきたい鬼一位は、伊賀忍者の里として有名な三重県は伊賀市の上野天満宮(菅原神社)に400年以上伝わる上野天神祭の「ひょろつき鬼」!
このお祭りは10月に行われ、その際に登場する「鬼行列」では百数十体の様々な表情の鬼達が秋の城下町を練り歩きます。中でも「ひょろつき鬼」は3体それぞれが大きな釣鐘や笈、斧などを身につけておりまして、道中ひょろひょろ歩いております。見た目も動きもユニークです。
 
②京都府 蘆山寺節分会追儺式「鬼法楽(鬼おどり)」
行列の由来は戦国時代の藤堂高虎にも関わりがありますので、歴史好きな方にもオススメ。
紫式部邸宅跡としても知られる京都廬山寺。京都の鬼と言えば酒呑童子が有名ですが、ここ廬山寺で行われる節分会追儺式の鬼法楽もオススメです。煩悩を示す赤鬼、瞋恚(怒り)の青鬼、愚痴の黒鬼が登場しますが、寺の開基である元三大師良源によって改心して心穏やかな良い鬼となります。
このように大変厳かな内容で、当日は良源が用いたという独古やサンコ、降魔面といった貴重な品の開帳があることもオススメなのですが、ここはまず魅力的な法楽の鬼達の姿をぜひ♪
 
③長崎県 大宝寺 「ずなうち」
長崎県五島列島の玉之浦町にある大宝寺。こちらの境内には言代主神社が鎮座されており、そこで9月に行われる秋の例大祭は、地元では「ずなうち」と呼ばれ親しまれています。(国指定無形民俗文化財「下五島大宝郷の砂打ち」)
このとき登場するのがサンドーラと呼ばれる鬼です。本来は「桟俵をかぶる役」という意味がありますが、地域では鬼として愛されている存在です。祭礼の道中では見物客や住宅に手にしたビクから砂を打ち付けまくります!これが厄払いになるんですよ♪
 
 

山崎 敬子 / Yamazaki keiko

実践女子大学院文学研究科美術史学専攻修士課程卒。大学在学時から折口信夫の民俗芸能学を学び、全国の祭礼を見て歩く。有明教育芸術短期大学子ども教育学科非常勤講師(民俗学)や早稲田大学メディア文化研究所招聘研究員などを経て、現在は、玉川大学芸術学部パフォーミング・アーツ学科講師(民俗芸能論)や学習院さくらアカデミー講師ほか。また、民俗芸能を地域資産として活かすべく、(株)オマツリジャパンなどで地域活性に取り組んでいる。


著作例:
編集:『年中行事辞典』(三隅治雄・編/東京堂出版 2007年)、
共著:『メディアの将来像』(メディア文化研究所・編/一藝社2014年)
著書:『にっぽんオニ図鑑』(じゃこめてい出版 2019年)
脚本:朗読劇『イナダヒメ語り』(武蔵一宮氷川神社 2018年)
コラム:オニ文化コラム(社)鬼ごっこ協会 毎月更新)、山崎先生の民俗学(ミドルエッジ)、にほん風習風土記(陸上自衛隊)、氷川風土記(武蔵一宮氷川神社)