2020.12.21

『オニ文化コラム』Vol,69

 
山崎 敬子
コラムニスト
玉川大学芸術学部講師

 
 
2020年最後の鬼文化コラムは、満を持して「鬼の名を持つ魚」をご紹介します。
 
それは、サケ目サケ科イトウ属に分類される淡水魚「魚鬼」。本来は魚偏に鬼と書きますが、北海道水産林務部のサイトに則って「魚鬼」と表記させていただきます。
 
「魚鬼」という文字を見ても一発で読める人は少ないと思います。これは「イトウ」と読みます。前述のサイトに『「幻の魚」と呼ばれ食される機会はあまりありませんが、養殖されたものは刺身や天ぷら、焼き魚に調理されるほか、一部釣り堀で利用されます。釣り人にとっては憧れの魚です』と紹介されている魚で、最大1.5mを越え、2mにもなるともいう日本最大の淡水魚です。現在では北海道の一部でしか生息が確認されておらず、絶滅危惧種に指定されています。ちまみに、特別天然記念物「マリモ」の生息地である北海道阿寒湖(釧路市)ではイトウの人口孵化、飼育を行っており、同湖は日本でも数少ないイトウの生産地としても知られています。
 
という、北海道に生息する淡水魚ですが、かつては青森県小川原湖他1水系、岩手県の1水系にも生息していました(現在は絶滅)。そして和名は「糸魚」でした。イトウの読み方はこれに起因します。また、この文字の由来は、イトウの体がサケにしては細いことによるものと言われております。
 
ではなぜ「鬼の魚」とも呼ばれたのかといいますと、イトウの獰猛な性格からそこから「鬼」のイメージが当てられ、漢字にも使われたという説が一般的です。このほか、産卵期に真っ赤な婚姻色に染まったオスが、メスを巡って闘う姿が、赤鬼のイメージと重なり、「鬼」の字が当てられたという説もあります。
 
そんなイトウですが、実は1月10日は「イトウの日」。これは「イトウ」を展示する北海道北見市の「北の大地の水族館」(北海道北見市留辺蘂町松山1-4)が制定したもので、「1」と「10」で「イトウ」と読む語呂合わせから1月10日に決められたそうです(記念日は一般社団法人・日本記念日協会により認定・登録)。
 
体長が1メートルになるのに15年の歳月がかかるイトウですが、北の大地の水族館では温根湯の地下水で約20匹の1メートル級のイトウが育っているそうですよ♪
 
 

山崎 敬子 / Yamazaki keiko

実践女子大学院文学研究科美術史学専攻修士課程卒。大学在学時から折口信夫の民俗芸能学を学び、全国の祭礼を見て歩く。有明教育芸術短期大学子ども教育学科非常勤講師(民俗学)や早稲田大学メディア文化研究所招聘研究員などを経て、現在は、玉川大学芸術学部パフォーミング・アーツ学科講師(民俗芸能論)や学習院さくらアカデミー講師ほか。また、民俗芸能を地域資産として活かすべく、(株)オマツリジャパンなどで地域活性に取り組んでいる。


著作例:
編集:『年中行事辞典』(三隅治雄・編/東京堂出版 2007年)、
共著:『メディアの将来像』(メディア文化研究所・編/一藝社2014年)
著書:『にっぽんオニ図鑑』(じゃこめてい出版 2019年)
脚本:朗読劇『イナダヒメ語り』(武蔵一宮氷川神社 2018年)
コラム:オニ文化コラム(社)鬼ごっこ協会 毎月更新)、山崎先生の民俗学(ミドルエッジ)、にほん風習風土記(陸上自衛隊)、氷川風土記(武蔵一宮氷川神社)