2020.11.20

『オニ文化コラム』Vol,68

 
山崎 敬子
コラムニスト
玉川大学芸術学部講師

 
 
段々寒くなってまいりました。まだ炬燵は早いかもしれませんが、炬燵でミカンや団子を食べたくなります。ですので、今回は団子のお話を。
 
鬼退治として有名な岡山県の桃太郎伝説は、平成30年度『日本遺産』(文化庁)に「『桃太郎伝説』の生まれたまち おかやま~古代吉備の遺産が誘う鬼退治の物語」として認定されました。
 
これは、同伝説の鬼の元ネタである温羅(うら)の居城として門などの復元が進む巨大山城「鬼城山」(鬼ノ城)や、桃太郎を意味する吉備津彦命(きびつひこのみこと)が温羅との戦で築いたとされる墳丘墓「楯築遺跡」、吉備津彦命をまつる「吉備津神社」「吉備津彦神社」、吉備の勢力を誇示する巨大前方後円墳の「造山古墳」(同市)と「両宮山古墳」などを申請したもので、この他に、桃太郎伝説には欠かせない桃やきびだんごも申請している点も特徴です。
 
実は、岡山の桃太郎伝説は古代吉備の繁栄の物語でもあります。第7代孝霊天皇の第3皇子・吉備津彦命と稚武彦命(わかたけひこのみこと)が吉備国(現・岡山)を支配していた温羅を討伐した伝説が由来とも言われており、温羅は製鉄技術を吉備地域へもたらして鬼ノ城を拠点として一帯を支配したとされています。1583年に成立した吉備津神社の記録「吉備津宮勧進帳」には吉備津彦命が鬼を退治した伝説について書かれており、桃太郎の鬼退治を現代に伝える最古の文献とされております。

さてお。きび団子が全国的に有名になった要因のひとつには岡山銘菓「吉備(きび)団子」と桃太郎の逸話に出てくる「黍(きび)団子」がうまく合体した点と山陽鉄道が日清戦争(明治27年)のための輸送を担ったことが挙げられます。当時、岡山県の和菓子屋・廣榮堂の武田浅次郎さんが、桃太郎の扮装で『日本一の吉備団子』ののぼりを立て対外戦争に鬼退治というイメージを重ね、帰還してきた兵士たちを桃太郎になぞらえておみやげとして販売。「鬼ヶ島を成敗した桃太郎の皆様、凱旋祝に故郷へのお土産は岡山駅で売っている吉備団子」と大宣伝したそうです。これが当たり、岡山を代表する名物として全国へその名を馳せるようになったそうです。食べ物の効果って凄いですね♪
 
 
 

山崎 敬子 / Yamazaki keiko

実践女子大学院文学研究科美術史学専攻修士課程卒。大学在学時から折口信夫の民俗芸能学を学び、全国の祭礼を見て歩く。有明教育芸術短期大学子ども教育学科非常勤講師(民俗学)や早稲田大学メディア文化研究所招聘研究員などを経て、現在は、玉川大学芸術学部パフォーミング・アーツ学科講師(民俗芸能論)や学習院さくらアカデミー講師ほか。また、民俗芸能を地域資産として活かすべく、(株)オマツリジャパンなどで地域活性に取り組んでいる。


著作例:
編集:『年中行事辞典』(三隅治雄・編/東京堂出版 2007年)、
共著:『メディアの将来像』(メディア文化研究所・編/一藝社2014年)
著書:『にっぽんオニ図鑑』(じゃこめてい出版 2019年)
脚本:朗読劇『イナダヒメ語り』(武蔵一宮氷川神社 2018年)
コラム:オニ文化コラム(社)鬼ごっこ協会 毎月更新)、山崎先生の民俗学(ミドルエッジ)、にほん風習風土記(陸上自衛隊)、氷川風土記(武蔵一宮氷川神社)