2020.5.25

『オニ文化コラム』Vol,62

 
山崎 敬子
コラムニスト
玉川大学芸術学部講師

 
新型コロナウィルス感染症で移動もままらない現在ですが、インターネットを通して地球のどこへも目を通すことができます。そんな風に前向きな思考を心掛けながら、今回は国の重要無形民俗文化財でもある沖縄県国頭郡伊江村(伊江島)の村踊りから、鬼に関わる演目「ペンシマ」を紹介いたします。
「伊江島の村踊」は伊江島の皆様が古くから伝えてきた貴重な芸能で、ヤマト風芸能の踊り・島で創作された踊り・沖縄本島や他の地域などから伝来して来た踊りの3つに分類されます。ペンシマは、その由来は文献などでは把握できませんが本島にも存在する踊りが村で独自発展したものです。
もう少し説明させていただきますと、ペンシマは沖縄本島では「フェーヌシマ」と呼ばれるもののひとつです。フェーヌシマは「南島」と書きますが、さておきこの踊りは棒を用いる棒踊り。そして赤毛のカツラと腰蓑を付けた踊り手たちが複数人で踊ります。踊りは南方系の棒踊りと大和から伝来した念仏踊りが合体したもののようですが、伊江村ではフェーヌシマではなく「ペンシマ」として伝えられ、西江上区に伝わっております。フェーヌシマ系の踊りの中でも、この「ペンシマ」だけが鬼面を被り、4場面からの構成になっております。そして鬼退治の場面は、このペンシマで独自に構成したものだと思われます。
さて、その内容はなにか。こちらについては伊江村公式ページを参考にご紹介します。
【第1場面】6匹の鬼が四尺棒を持って「ハウー」と奇声をあげ登場する。鬼は白のシャツ、ズボンの上に黒の陣羽織を着け、黒の脚絆、鬼面を被る。
【第2場面】棒を持たずに登場し、素手で跳びはねながら、意味不詳の歌に合わせ踊る。
【第3場面】藪地の比屋(ヤブツィヌヒヤ)の息子、平安座パッタラという武士が登場し「この村に鬼が出没して、人々に危害を加えるので退治してやる。」という詞章を唱える。
【第4場面】鬼の住処へ行き、「退治に来たから勝負せよ」と迫る。鬼が1匹ずつ出てきて平安座パッタラと戦うが、勝てずに「ナラーン ナラン ナラン」と降参し、ひもで縛り退治する。
 
という内容です。桃太郎の鬼退治とはまた違う鬼退治もぜひ楽しんでください♪
 
 

山崎 敬子 / Yamazaki keiko

実践女子大学院文学研究科美術史学専攻修士課程卒。大学在学時から折口信夫の民俗芸能学を学び、全国の祭礼を見て歩く。有明教育芸術短期大学子ども教育学科非常勤講師(民俗学)や早稲田大学メディア文化研究所招聘研究員などを経て、現在は、玉川大学芸術学部パフォーミング・アーツ学科講師(民俗芸能論)や学習院さくらアカデミー講師ほか。また、民俗芸能を地域資産として活かすべく、(株)オマツリジャパンなどで地域活性に取り組んでいる。


著作例:
編集:『年中行事辞典』(三隅治雄・編/東京堂出版 2007年)、
共著:『メディアの将来像』(メディア文化研究所・編/一藝社2014年)
著書:『にっぽんオニ図鑑』(じゃこめてい出版 2019年)
脚本:朗読劇『イナダヒメ語り』(武蔵一宮氷川神社 2018年)
コラム:オニ文化コラム(社)鬼ごっこ協会 毎月更新)、山崎先生の民俗学(ミドルエッジ)、にほん風習風土記(陸上自衛隊)、氷川風土記(武蔵一宮氷川神社)