2019.7.26

『オニ文化コラム』Vol,52

 
山崎 敬子
コラムニスト
玉川大学芸術学部講師

そろそろ梅雨が終わるであろうこの頃。
今回は、鬼が仏になった里のご紹介です。
 
平成30年5月24日、平成30年度「日本遺産」認定について大分県豊後高田市・国東市が共同申請した、『鬼が仏になった里「くにさき」』が認定されたと発表がありました。「日本遺産」とは、地域において世代を超えて受け継がれている有形・無形の文化財を共通の「ストーリー」の下にパッケージ化し、そのストーリーを我が国の文化・伝統を語るものとして文化庁が「日本遺産」に認定する制度で、平成27年から始まった取り組みです。例えば群馬県は「かかあ天下-ぐんまの絹物語-」、岡山県からは「「桃太郎伝説」の生まれたまち おかやま ~古代吉備の遺産が誘う鬼退治の物語~」などなど全国から様々のストーリーが認定されており、2020年までに100件ほど認定していく予定だそうです。
 
岡山県の桃太郎伝説の鬼退治も鬼ですが、今回は大分県の鬼。
話をもどしますと、くにさきの鬼のお話です。
 
くにさきの「鬼」と祭礼といえば、「修正鬼会」。大分県国東半島にある六郷満山の寺院で旧正月に行われる火祭りで、五穀豊穣を祈る寺院の正月行事である修正会と、大晦日の夜に悪鬼を祓う宮中行事である追儺式が独自に変化し、鬼祭りと火祭りとが一体になった行事であるとされており、祭礼自体は昭和52年に重要無形民俗文化財に指定されております。六郷満山日本遺産推進協議会さんのサイトには、「くにさき」の鬼はその法力を使って災厄を払う良い鬼として、人々から厚く信仰されているのである・・・と紹介されております。この地域では鬼が五穀豊穣をもたらしてくれるのです。ですから、くにさきでは鬼と人はともに寄り添い、お酒を飲み交わし、語り合いながら一生が過ぎるのです。
 
「くにさき」の寺には鬼がいる。
一般に恐ろしいものの象徴である鬼だが、「くにさき」の鬼は人々に幸せを届けてくれる。修正鬼会の晩、共に笑い、踊り、酒を酌み交わす――。「くにさき」では、人々と鬼とが長年の友のように繋がれる。(六郷満山日本遺産推進協議会サイトより抜粋)
 
 
一生の友として鬼と飲み語らう・・・そんな地域も日本にはあります。素敵ですね。

山崎 敬子 / Yamazaki keiko

実践女子大学院文学研究科美術史学専攻修士課程卒。大学在学時から折口信夫の民俗芸能学を学び、全国の祭礼を見て歩く。有明教育芸術短期大学子ども教育学科非常勤講師(民俗学)や早稲田大学メディア文化研究所招聘研究員などを経て、現在は、玉川大学芸術学部パフォーミング・アーツ学科講師(民俗芸能論)や学習院さくらアカデミー講師ほか。また、民俗芸能を地域資産として活かすべく、(株)オマツリジャパンなどで地域活性に取り組んでいる。


著作例:
編集:『年中行事辞典』(三隅治雄・編/東京堂出版 2007年)、
共著:『メディアの将来像』(メディア文化研究所・編/一藝社2014年)
著書:『にっぽんオニ図鑑』(じゃこめてい出版 2019年)
脚本:朗読劇『イナダヒメ語り』(武蔵一宮氷川神社 2018年)
コラム:オニ文化コラム(社)鬼ごっこ協会 毎月更新)、山崎先生の民俗学(ミドルエッジ)、にほん風習風土記(陸上自衛隊)、氷川風土記(武蔵一宮氷川神社)