2019.4.25

『オニ文化コラム』Vol,49

 
山崎 敬子
コラムニスト
玉川大学芸術学部講師

 
今月、お笑いコンビ「オードリー」の春日俊彰さんがTBS「ニンゲン観察バラエティ モニタリング3時間SP」に生出演し、11年間交際してきた女性へのプロポーズに成功し結婚することになった話題が、相方の若林正恭さんの大号泣映像と共に日本中をホッコリさせてくれました。
 
その春日さんの持ちネタといえば「鬼瓦」。
 
石野瓦工業のサイト「瓦歴史資料館」によると、崇峻天皇元年(588)、日本初となる寺造り(飛鳥寺造営)が始まり、この寺を造る時に百済から技術者が渡来したそうです。建物の大棟などの瓦を「鬼瓦」と言うようになったのは室町時代以降、立体的な鬼デザインの瓦が登場してからだとか。とはいえ、邪鬼をかたどった瓦はそれ以前、奈良時代から存在しているようでして、これは悪い気や霊(魔)がこないために作られたそうです。ですから鬼瓦の鬼は良い存在です。また、同サイトによると「天平年間には顔面だけの鬼瓦、まさに鬼面文鬼瓦が作られるようになります。注意して見ますと、よく似た顔つきで大小ありますので、大棟用と降り棟用とが使い分けられたのでしょう。平城京の寺々の鬼瓦は額に鋸歯文をおいたり、眼がとび出したりしており宮殿のものと様相がちがいます。このような鬼瓦は、国分寺の造営とともに全国に広まっていきます」とのこと。全国に鬼瓦があるのはそういう訳なのですね。
 
さてこの鬼瓦。細かく言うと「隅鬼」というモノもあります。下屋や本屋の隅に載せる鬼瓦のことで、下屋に載せられた隅鬼は目に入りやすい気がします。目に入りやすいということは、私たちの近くで四方からの魔をはらってくれる存在ということ。特に奈良の唐招提寺金堂の隅鬼が有名で、これは普段は人目に触れることのなかった四体の隅鬼です。しかし、平成大修理(2000~2009)の時に地上に降ろされて、東京国立博物館で開催された「唐招提寺展」(2005)に出陳されました。ここで認知が広がった気がします
 
この唐招提寺金堂の隅鬼がモデルとなった絵本『すみ鬼にげた』(岩城範枝・作/松村公嗣・絵/福音館書店)もオススメです。
 
平成最後のコラムは良い鬼で締めくくらせていただきました。新元号からも、どうぞよろしくお願い致します♪

山崎 敬子 / Yamazaki keiko

実践女子大学院文学研究科美術史学専攻修士課程卒。大学在学時から折口信夫の民俗芸能学を学び、全国の祭礼を見て歩く。有明教育芸術短期大学子ども教育学科非常勤講師(民俗学)や早稲田大学メディア文化研究所招聘研究員などを経て、現在は、玉川大学芸術学部パフォーミング・アーツ学科講師(民俗芸能論)や学習院さくらアカデミー講師ほか。また、民俗芸能を地域資産として活かすべく、(株)オマツリジャパンなどで地域活性に取り組んでいる。


著作例:
編集:『年中行事辞典』(三隅治雄・編/東京堂出版 2007年)、
共著:『メディアの将来像』(メディア文化研究所・編/一藝社2014年)
著書:『にっぽんオニ図鑑』(じゃこめてい出版 2019年)
脚本:朗読劇『イナダヒメ語り』(武蔵一宮氷川神社 2018年)
コラム:オニ文化コラム(社)鬼ごっこ協会 毎月更新)、山崎先生の民俗学(ミドルエッジ)、にほん風習風土記(陸上自衛隊)、氷川風土記(武蔵一宮氷川神社)