2018.10.30

『オニ文化コラム』Vol,43

 
山崎 敬子
コラムニスト
玉川大学芸術学部講師

11月3日は「文化の日」。今回は日本人の優しさを感じさせる県を2つご紹介します。
 
まず香川県の「親切な青鬼くん」。
 
浜田廣介さんが書かれた有名な児童書『泣いた赤鬼』をご存知の方も多いかと思います。人間と仲良くなりたかった赤鬼のために、友人の青鬼がわざと人間に嫌われる行動をとり、赤鬼がその青鬼をこらしめることで、赤鬼が人間と仲良くなるきっかけを作るお話です。そして最後、青鬼は一通の手紙を残して旅にでます。そこには「赤鬼くん、人間たちと仲良くして、楽しく暮らしてください。もし、ぼくが、このまま君と付き合っていると、君も悪い鬼だと思われるかもしれません。それで、ぼくは、旅に出るけれども、いつまでも君を忘れません。さようなら、体を大事にしてください。ぼくはどこまでも君の友達です」と書いてあり、青鬼の優しさに赤鬼は涙が止まらなくなる…そんなお話です。
 
童話では青鬼が旅に出たところで終わっています。しかしそんな優しい青鬼がその後どこで暮らしているか…これが香川県高松市なのです。高松市ではその後の設定として、香川県に立ち寄った青鬼が讃岐のお接待の心(四国霊場八十八カ所巡りのお遍路さんに対するおもてなしの心に代表されるもの)にふれ、人々の温かい心に感謝してこの地に住み着いたということにしています。高松市のキャラクター「親切な青鬼くん」の像が高松駅前にあるので、ぜひ探してみてください♪
 
次に節分で退治された鬼と群馬県。
 
2月に全国各地で行われる「節分」。「鬼は外、福は内」の掛け声と鬼退治の豆まきを皆様も一度はしたことがありませんか?退治された鬼たちは一体どこへ行くのでしょう…。実は退治された鬼たちを受け入れる地域があります。群馬県藤岡市です。藤岡市鬼石では、節分で追い出された鬼を全国から呼び入れるイベント『鬼恋節分祭』を毎年2月3日に開催しております。
 
同市には「鬼石(オニシ)」という地名が伝わっており、鬼が身近な地域です。そこで、全国で追い出された鬼を迎え入れ「鬼は内、福は内」の掛け声で豆まきを行い、鬼石で楽しく遊んでもらうのです。豆で退治する地域もあれば受け入れる地域もある…日本人の優しさですね♪

山崎 敬子 / Yamazaki keiko

実践女子大学院文学研究科美術史学専攻修士課程卒。大学在学時から折口信夫の民俗芸能学を学び、全国の祭礼を見て歩く。有明教育芸術短期大学子ども教育学科非常勤講師(民俗学)や早稲田大学メディア文化研究所招聘研究員などを経て、現在は、玉川大学芸術学部パフォーミング・アーツ学科講師(民俗芸能論)や学習院さくらアカデミー講師ほか。また、民俗芸能を地域資産として活かすべく、(株)オマツリジャパンなどで地域活性に取り組んでいる。


著作例:
編集:『年中行事辞典』(三隅治雄・編/東京堂出版 2007年)、
共著:『メディアの将来像』(メディア文化研究所・編/一藝社2014年)
著書:『にっぽんオニ図鑑』(じゃこめてい出版 2019年)
脚本:朗読劇『イナダヒメ語り』(武蔵一宮氷川神社 2018年)
コラム:オニ文化コラム(社)鬼ごっこ協会 毎月更新)、山崎先生の民俗学(ミドルエッジ)、にほん風習風土記(陸上自衛隊)、氷川風土記(武蔵一宮氷川神社)