2018.4.24

『オニ文化コラム』Vol,37

 
山崎 敬子
コラムニスト
玉川大学芸術学部講師

 
新年度が始まりました。本年度もどうぞよろしくお願い致します。
そんな4月、ホッコリする富山県の鬼をば。
  
『よみがたり 富山のむかし話』(富山県児童文学研究会・編/昭和53年(1978年)初版)に収録されている民話より「鬼をおがんだおばあさん」をご紹介します。
 
ある村のお婆さんは仏様を拝まず鬼を拝んでおりました。そんなお婆さんが亡くなり、閻魔大王の審査を受けに向かう道すがら鬼に出会います。お婆さんは大喜び。鬼たちも「あ!いつもボクたちを拝んでくれていたお婆さんだっ♪」と大喜び。そんなお婆さんに対し閻魔大王は「生前は神仏を拝まず鬼を拝んでおったな。けしらん!」と地獄に落としてしまいます。
 
そして地獄での刑が始まるのですが、ことごとく鬼たちがお婆さんを助けます。例えば釜茹での刑ではお婆さん専用の小さな釜でお風呂を用意。お婆さんはお風呂で気持ちよくなり歌まで歌い出しちゃう始末。その歌声に驚いた大王、「これじゃあ刑にならん!針の山に連れていきなさい」と、お婆さんを針の山の刑に。ここでも鬼たちがお婆さんを助けるべく鉄下駄をプレゼント。お婆さんは足を痛めることなく針の山の頂上まで上ります。頂上からは極楽浄土が見えて、その美しさにお婆さん大感激。「このまま針の山に住みたい」と言い出す始末。
 
閻魔大王は「こりゃ、どの刑をしても地獄にいても意味が無いわ」と諦めて、お婆さんを地獄から極楽浄土に送ることにしました。鬼たちは悲しみました。でも、お婆さんが極楽浄土に向かう階段のところに行くと、その入り口にはお婆さんを見送りに鬼たちが来ておりました。もう一緒に過ごせない悲しさはあるけど、見送りにきたのです。そんな鬼たちに見送られながらお婆さんは極楽浄土に向かうのでした―
 
という感じのお話です。このお話はTVアニメ「まんが日本むかしばなし」(毎日放送)でも取り上げられまして、昭和63年(1988年)12月3日に「鬼をおがんだおばあさん」というタイトルで放送されております。

おばあさんが鬼を拝んだ理由は語られておりませんが、拝まれた鬼たちとお婆さんの人情味ある交流に私はホッコリします♪鬼も拝まれたら嬉しいんですね♪

山崎 敬子 / Yamazaki keiko

実践女子大学院文学研究科美術史学専攻修士課程卒。大学在学時から折口信夫の民俗芸能学を学び、全国の祭礼を見て歩く。有明教育芸術短期大学子ども教育学科非常勤講師(民俗学)や早稲田大学メディア文化研究所招聘研究員などを経て、現在は、玉川大学芸術学部パフォーミング・アーツ学科講師(民俗芸能論)や学習院さくらアカデミー講師ほか。また、民俗芸能を地域資産として活かすべく、(株)オマツリジャパンなどで地域活性に取り組んでいる。


著作例:
編集:『年中行事辞典』(三隅治雄・編/東京堂出版 2007年)、
共著:『メディアの将来像』(メディア文化研究所・編/一藝社2014年)
著書:『にっぽんオニ図鑑』(じゃこめてい出版 2019年)
脚本:朗読劇『イナダヒメ語り』(武蔵一宮氷川神社 2018年)
コラム:オニ文化コラム(社)鬼ごっこ協会 毎月更新)、山崎先生の民俗学(ミドルエッジ)、にほん風習風土記(陸上自衛隊)、氷川風土記(武蔵一宮氷川神社)