2017.6.26

『オニ文化コラム』Vol,27

 
山崎 敬子
コラムニスト
玉川大学芸術学部講師

梅雨ですが6月のコラムは、雨に関係ないお話からスタートです。
 
鬼というと「鬼退治」を連想する方も多いように見受けられます。その筆頭は桃太郎による鬼退治。今回はそれに関係するお話です。
 
皆様が思い出す桃太郎伝説の舞台はどこでしょうか?多くの方は岡山を連想するのではないでしょうか?岡山の桃太郎伝説は、第7代孝霊天皇の第3皇子・吉備津彦命(きびつひこのみこと)と稚武彦命(わかたけひこのみこと)が吉備国(現・岡山)を支配していた温羅(うら)を討伐した伝説が元ネタと言われます。
温羅は製鉄技術を吉備地域へもたらして鬼ノ城を拠点として一帯を支配したとされていますが、さておき。何故、岡山の桃太郎伝説が全国的に有名になったのかというと、岡山銘菓「吉備(きび)団子」と桃太郎の逸話に出てくる「黍(きび)団子」がうまく合体したからでもあります。食べ物の効果って凄いですね。

桃太郎の鬼退治といえば黍団子。

しかし、桃太郎伝説は岡山以外の地域でも伝承されていまして、地域によっては黍団子とは限らないのです。
 
山梨県の大月にも桃太郎伝説が残っております。伝説の内容を大雑把に書きますと・・・
 
昔、桃倉山(今の百蔵山)の麓におじいさんとおばあさんが住んでいた。ある日、山で見つけた桃を持ち帰り、切って食べようとしたら中から男の子が生まれたので桃太郎と名づけて育てた。成長した桃太郎は、岩殿山に住む悪い鬼を退治に出かけた。途中で犬と雉と猿を家来にした(犬の出た所が犬目、雉の出た所が鳥沢、猿の出た所が猿橋という地名になった)。
 
というような内容です。岡山の伝説と似ていますね。
ですが、岡山と違う点があります。おばあさんに毎日作ってもらった「おつけ団子」を犬・雉・猿に与えたのです。
これ、今も大月に伝わる料理です。「おつけだんご」と言いますが、串に刺さった団子ではありません。味噌汁の中に旬の野菜と小麦粉を水で溶いた団子を入れた料理です。そう、汁物です!同じ山梨県の郷土料理として有名な「ほうとう」に近い気がします。
桃太郎の鬼退治に不可欠な「だんご」。地域によって内容が違うというのも楽しいですね。大月の桃太郎伝説もオススメですよ♪

山崎 敬子 / Yamazaki keiko

実践女子大学院文学研究科美術史学専攻修士課程卒。大学在学時から折口信夫の民俗芸能学を学び、全国の祭礼を見て歩く。有明教育芸術短期大学子ども教育学科非常勤講師(民俗学)や早稲田大学メディア文化研究所招聘研究員などを経て、現在は、玉川大学芸術学部パフォーミング・アーツ学科講師(民俗芸能論)や学習院さくらアカデミー講師ほか。また、民俗芸能を地域資産として活かすべく、(株)オマツリジャパンなどで地域活性に取り組んでいる。


著作例:
編集:『年中行事辞典』(三隅治雄・編/東京堂出版 2007年)、
共著:『メディアの将来像』(メディア文化研究所・編/一藝社2014年)
著書:『にっぽんオニ図鑑』(じゃこめてい出版 2019年)
脚本:朗読劇『イナダヒメ語り』(武蔵一宮氷川神社 2018年)
コラム:オニ文化コラム(社)鬼ごっこ協会 毎月更新)、山崎先生の民俗学(ミドルエッジ)、にほん風習風土記(陸上自衛隊)、氷川風土記(武蔵一宮氷川神社)